枝葉末節
「枝葉末節」、言葉で言うと、木の幹でない枝葉の部分ですね。転じて、主要なものでないことや、大事でないことを指してよく使われる言葉ですね。ところで20年以上前、このタイトルで本を出版されたのが、当時、日本大学工学部建築学科教授の谷川正巳先生でした。
実は、私、この先生の影響で、文章を(当時はエッセイから)書き始めました。谷川先生からは西洋建築史と近代建築史を習っていたのですが、講義の中で、先生独自の建築思想論を楽しく教わりました。谷川先生、日本におけるフランク・ロイド・ライト研究の第一人者でしたから、授業はライトのエピソードが多かったですね。三井ホームが企画したライトのドキュメンタリー「輝ける額」の撮影時に女優吉永小百合さんとご一緒した話しなど、そりゃ、もう楽しそうでしたっけ。
ところで、谷川先生いわく、建築の設計においては、この枝葉末節な枝葉の部分が、完成後の使いがってに与える影響の大きさ・大切さを熱くおっしゃってました。
住宅の設計において、確かに幹の部分、つまり構造や基本プランの部分は重要です。何といっても、構造やプランは生命の安全や価格といった最も重要な部分ですからね。ところでこれに比べると、コンセントの高さを何センチに取り付けるとか、キッチンの壁の仕上げ材料は何にするかとか、ちょっとした棚をつけるつけないとか…(言い出すときりが無いのですが…)こんな細かなことが、完成した住宅にお住まいになってからの満足度につながるんですね。だから生活していくうえでの、まぁ、どうでもいいような細かいことが、気になることを意識してしまう性格なのかも知れませんが、設計やってたころ役に立ちました。 今も小説を書くのには役に立ってます
例えば、洗濯物で靴下たたむ時に、僕はたたまず、クルくるっとまとめて、引き出しの奥からしまうんですね。こうすると常に同じものばかりはかないですよね。でも、うちの女房はなんにも考えず手前からしまいます。たまに同じものがそろってなかったり…
こんな例はたくさんありますよ。まあ、見てみないようにしてますけど
打ち合わせに訪問したときも、だまって、いろいろ眺めてましたよ。たとえば、食器棚の中の置き方。整然としていたり、バラバラだったり、しっちゃかめっちゃかだったり。 素直に家事が嫌いだと言ってくれれば、いいのに、(ストレートな奥様もいましたけどね)、こちらもそういうところから推測するしかない。まあ、9割り方当たりましたね。何事も経験ですね。でも、そういう細かな観察って、設計に役に立つものなんです。 自動車の設計でも、トヨタ・ホンダはうまいですよね。だって、徹底して人間の行動を観察して商品開発してますもの。
だから、建築を学ぶ学生さん、特に設計やりたいといっている学生さんにも、日常生活の細部にこだわって欲しいなぁなどと、思いながら…。