構造が嫌いな学生諸君
写真は、左から、木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造の構造模型です。左二つの模型は本校で製作した物です。

さて、左の写真は、職場の建物の柱。耐震強度で引っかかり、で現在耐震改修工事中です。
校内のいたるところの、壁を撤去し、柱を削り、これから補強工事をしていくというもの。
だから校内あちらこちらが閉鎖中。でも、いま、地震がきたらと思うと、寒気が…。「一ころだぞこれは…」という感じです。


ところで、建物の強度が弱い理由はいくつか挙げられますが
①設計の段階で満たしていない
②施行不良
以上の二点が考えられます。特に設計段階の場合、建築基準法が改正される以前と後では水平剛性に対する安全率の考え方が違いますから、古い建物だと、現行の基準に抵触してしまうのですね。
姉歯建築士の場合は、分かってながら、強度の偽装をしていましたから、あれは犯罪です。人の命より、お金が大事という見本みたいな話しですね。けしてあってはなりません。
さて、施行不良も、かなり問題です。特に鉄筋コンクリート造の場合、構造体の中にある鉄筋の太さ、量は昔はいくらでもインチキしていましたし、コンクリートにも不法加水をしていましたから、所定の強度が出ないんですね。もちろん古い建築物の全てがそうではないのですが、うちの職場の建物、以前調査したとき、明らかにコンクリートの被りがない。(足りないのでなく無い箇所発見) 手抜き工事の最たるものです。困ったものです。それで今になって、構造強度が足りないなんて…当たり前。設計が旧基準で、おまけに施行も手抜き。ダブルパンチなのです。


さてさて、学生にこのような構造の話しをすると嫌いな学生多いんです。
特に構造は、構造設計・建築材料学・建築施工方法の三つが分かってないと、会話が成立たないんですが、特に学生は構造設計は嫌いな学生多いですね。
まず基本は 荷重・反力・応力・断面算定(計算)・基準強度(材料強度)・許容応力度算定 といったものさえ覚えれば何とか会話が成立つんですけどね…。
さてこのときに、この角材は二本の柱材で支えられていますから、一本の柱には 80÷2 で40キロの力がうえからかかっています。さて、小学生の時、力の釣り合いを勉強しましたよね、(支点・力点・作用点のやじろべいの話しです)
この柱のケースの場合、柱の上から40キロの力で押されている場合、柱の下から同じ40キロの力で押し返しているんでね。この力を反力といいます。
荷重がかかって、反力が生じると、実は角材や柱の中には、力が伝達されているのです。こ部材の内部に生じる伝達する力(流れ方)を応力といいます。(経験上、この応力が学生最も嫌いですね

応力には、軸方向力(圧縮と引張りの二つがあります)、せん断力、曲げモーメントの三種類があります。軸方向力はこの場合
圧縮力として柱をつぶそうと働く力の流れですね。せん断とは、横向きの角材を上下に引きちぎろうと働く力の流れ、曲げモーメントとは、角材を曲げようとする力の流れです。下のスケッチで左がせん断力による壊れ方、右は曲げによる変形のイメージです。
ところでこの応力の分布は一様ではありません。右のスケッチは、例題の曲げモーメントの分布状態を示した応力図です。つまり、加重がかかっている真下、梁材の真ん中が一番壊れやすく、言い換えると曲がりやすくなっています。

その最も壊れやすいところがどこなのか、どれくらいの力がかかるのかを知るのが応力計算です。
次に考えるのが、断面算定です。な~んてことはありません。経験上、太い柱は細い柱より丈夫なことを知っていますよね。
要は、どれだけ太くすれば壊れないかを考えるわけです。もう一つ大切なことは、断面の向きなのです。
たとえば、横10センチ縦20センチの角材があったとして、これをどちらを縦向きに使えば丈夫かと言うことを考えます。
上のスケッチの場合、20センチの方を縦方向に使用した方が丈夫ですよね。
その次が、材料の持つ強さです。たとえば、生物材料である木材は、1センチ角にどれだけの力をかけたら壊れるかが、これまでの実験結果から、おおよその数値が分かっています。おおよそと言ったのは、木材は生物ですから、同じ種類の木材でも若干のばらつきがあるのですね。この壊れるときの強度を材料強度と言います。これに対して、コンクリートはセメント・水・砂・砂利の配分で壊れる強度を変えられます。そこで、理論上想定する壊れる強度を設計基準強度と言います。
さて、今8トンの荷重が10センチ角の柱にかかっていたとして、この柱1センチ角の圧縮の設計基準強度が、100キロとすれば、柱の断面積は 10×10で100平方センチメートル。1センチ角で100キロだから 100×100で 10000㎏の力で壊れることになりますね。つまり逆に言うとこの柱は10トンの力まで耐えられます。だから8トンの荷重にならこの柱は耐えられますね。これが構造設計の基本的な考え方です。
最後に、上の例題で、仮に設計基準強度100だとしても、たとえばこの柱はその三分の一の約33キロで壊れてしまうとして計算するのです。そうすると、8000(㎏)÷33(㎏/平方センチメートル)=242.4242… この平方根は約15.6㎝となり
15.6センチ角の柱が必要になります。実際は8.96センチ角の柱で持ちますから、比較していただくと安全率3で設計基準強度を割って得た33㎏の値で設計をかけると、壊れるまでにやく3倍の余裕があることになりますね。この33キロの値、つまり基準強度を安全率で割って求めた値を許容応力度といいます。この許容応力度を用いて、建物の構造計算を行っていく方法を許容応力設計法と言い、最も基本的な構造計算の方法になります。
(後書きで追記しますと、厳密には許容応力度の値は基準法で定められています。あえて、σbやτのような具体的な話は控えています。ここでの記述は学生用の概念であるとお考え下さい)
ここまでをまとめて言うと、
部材に荷重がかかると、その部材を支える場所に反力が発生し、同時に部材の中に力が伝達される応力が発生する。応力は一様にかからず場所毎に異なる。その異なる応力の中で最大の応力値に耐えられるうに、安全率を考慮した許容応力度以下になるように材料の特性を考慮しながら断面積を算定する。
これが構造設計なんです。
これをいかにして学生に教えるかが難しいんだよなー

デモね、学生諸君。みんなは計画計画ってプラン造る方が好きだけど、安全に建たないプランは意味がないんだよ。最低でもここで書いたことが分かって計画設計しないと現場では笑われちゃうよ…

2008年10月02日 Posted bysetura at 21:31 │Comments(2) │建築概論
この記事へのコメント
こんにちは。
私は高校の時に建築科だったので、学生時代を思い出しました。
やっぱり構造が一番苦手でしたね~f^_^;
でも、建築の一番肝の部分ですよね。
私もプランばっかり頭でっかちで、よく先生に怒られてました(笑)
お体の具合いかがですか?
くれぐれも、ご自愛下さいね。
私は高校の時に建築科だったので、学生時代を思い出しました。
やっぱり構造が一番苦手でしたね~f^_^;
でも、建築の一番肝の部分ですよね。
私もプランばっかり頭でっかちで、よく先生に怒られてました(笑)
お体の具合いかがですか?
くれぐれも、ご自愛下さいね。
Posted by soto at 2008年10月05日 13:10
soto 様 コメントありがとうございます。美しい写真をいつも拝見させていただいております。建築科ご出身なんですか。是非、今度明朝の朝靄に隠れる建物や、夕暮れ時の建物などお願いします。(すいません個人的に建築が好きなもので…) 過日、開成山の夜景を拝見して、感動しておりました。これからも素敵な風景を期待しております。
Posted by setura
at 2008年10月05日 14:00

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