禿木をたずねて

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 創作の原点②で、父方の祖母の伯父が平田禿木[とくぼく]という明治の文学者であることを書きました。下記の文章は4年前に禿木のお墓がある両国へぶらりと散歩したときの様子を、ある会報に寄稿したエッセイです。 face02

   写真は左上から 両国回向院、禿木のお墓、隅田川からアサヒビールを望む、浅草浅草寺、左下 旧樋口一葉記念館 
     

  5月24日から6月4日に相模原市にある職業能力総合開発大学校での研修の中日の土曜日に禿木の足跡を訪ねてみようと、かねてよりの計画を実行。【研修の予習もせずにせっせとこっちの予習をしていた奴がいる】 8時45分に能開大前から橋本駅へ。苦手な電車の乗り換えにもメゲズ、目指すは両国。長い散歩の始まりである。両国駅より徒歩5分で回向院に着く。両国では由緒のあるお寺だそうで、ここに禿木のお墓がある。平田家の墓と並んで禿木の墓があった。しっかりとご先祖様を拝んでくる。両国から隅田川沿いに40分ほど歩く。水が汚く「春のうららの…」とはとても言いがたい。おまけに浮浪者の素敵なお住まいが永遠とつづき…がっかり。 金の泡【う○この方が有名?】で有名なアサヒビールの建物を目印に橋を渡れば、そこは浅草。神谷バーで「電気ブラウンで一杯」の誘惑に駆られながらも強い意志で通り過ぎ、浅草浅草寺の雷門に。しばらくプラプラと出店を見ながら参拝。研修からの無事帰還を祈る。女房殿に頼まれた浅草キティを探して回ると、ちょうど昼時。花やしきよりすぐの小路で牛すじの煮込み丼を生ビールで流し込む。うまい! 昼のビールは最高なり。周囲には馬券を握りテレビで競馬中継を見る電気ブラウン片手の素敵なおじ様達【耳に赤鉛筆】。
ほろ酔い気分で竜泉に。しかし歩けどたどりつかず。するとようやく道の両側に怪しげな呼び込み姿のお兄様方の姿が。そう,「たけくらべ」の舞台となった下谷竜泉は昔の吉原跡地。【1675年 振袖火事の後日本橋葭原よりこの地に移り新吉原と呼ばれる】そのためか今でも個室付浴場【ソープランドのこと】のメッカ。あるわあるわ郡山では信じられない景色。新たな誘惑にも負けずに目指す台東区立樋口一葉記念館は、そんな花街の通りを挟んであった。まずいんでないのこれは教育上と真剣に思いつつ、一葉が住んでいたからしょうがない。 一葉が文學会に掲載されるようになったのは、明治25年11月「都の花」95号から3回にわたって掲載された「うもれ木」を目にした禿木が感動し、文學界編集責任者であった星野天地に勧め【禿木は文學界創刊メンバーの一人】一葉の和歌の姉弟子であった女流作家三宅花圃を通じて文學界に一葉の寄稿を依頼したため。その後、一葉は文學界誌上で「雪の日」「琴の音」「花ごもり」「暗夜」「大つごもり」そして傑作といわれる「たけくらべ」を発表。 一葉は24才で亡くなってしまう生涯……天才は長生きできないのか? そう言えばモーツァルト・滝廉太郎もそうだった。良かった凡人で。実はこのことをホームページで知り、昨年から禿木にまつわる調べ物をしていた僕は、今回何か禿木にまつわるものはないかと記念館を訪れたしだい。するとなんと若き日の禿木の写真があった。そこには、若き島崎藤村の姿も見ることが出来きた。研修後、実家の祖母に写真を見せたところ、非常に懐かしがっていた。「藤村はタバコが好きで訪ねてくるといつも部屋が真っ白だったよ」が祖母の口癖。 竜泉の記念館から国道4号線を歩いて、上野の国立西洋美術館へ。コルビジェの設計した建物を堪能しつつ、企画展の古代ローマ彫刻展といつもの常設展を楽しむ。時間がなくて東京都美術館での栄光のオランダ・フランドル絵画展が見られなかったのか゛心残り。悔しさを紛らわすため、その後アメ横をほっつき歩く。日本酒で天丼なんざかっくらい【おっと、べらんめぃ】 ほろ酔い気分で橋本へ。本日の歩行距離十数キロ。次の日が寝て曜日だったのは言うまでも無い。
 今回、これを機会に禿木・藤村・一葉の作品をもう一度読んで明治浪漫主義の世界を知り、来年又散策したいと思ったしだい。【個人的にはホームズと谷崎がやっぱり好きだけど】 しばらくは今回見てきた竜泉の景色に一葉の文章からの想像を重ねて思いをはせよう。
      ホームズはソアブリッジの事件で言っているではないか

              「大切なのは想像と現実の融合なのだよ ワトソン君!」 
禿木をたずねて

「文學界」の同人たち       
 後列左から   島崎藤村・馬場孤蝶・平田禿木
 前列左から 上田柳村・星野天知・戸川秋骨・星野夕影



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2008年09月24日 Posted bysetura at 08:40 │Comments(0)小説ばなし

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